
「製造業でもDXが必要だ」と言われる機会は増えましたが、実際には「何から始めればいいのか分からない」「現場に負担が増えるのではないか」と感じている方も多いのではないでしょうか。
特に中小規模の製造業では、長年の経験や現場判断によって成り立っている業務も多く、簡単に仕組みを変えることはできません。
私自身、半導体製造の現場で工程管理を担当していた際も、
「この条件はカン・コツで設定するから、熟練者でないと製造できない」
「担当者がいないと判断が止まる」
といった場面に何度も直面してきました。
こうした悩みの背景にあるのが、「属人化」という課題です。
この記事では、半導体業界で工程管理に携わってきた経験をもとに、製造業におけるDXと属人化の関係を整理しながら、現場に無理な変更を求めない形で属人化を解消する具体策を解説していきます。
製造業の現場では、属人化は決して特別なことではありません。
加工条件の微調整や設備ごとのクセへの対応、不具合発生時の判断など、数値や手順だけでは対応しきれない場面が多く、経験に基づく判断が求められるためです。こうした積み重ねが品質や安定稼働を支えてきました。
私の経験でも、わずかな条件差が歩留まりに影響するため、最終的な判断は熟練者に委ねられる場面が少なくありませんでした。
一方で、この状態が続くと次のような課題が生まれます。
・特定の人に業務が集中する
・担当者が不在だと対応が止まる
・教育や引き継ぎに時間がかかる
・管理側が現場の判断を把握しにくい
私も仕事の中で工程の熟練者に製造業務や教育業務が集中し、残業で対応している場面を多く見てきました。
属人化は自然に生まれるものですが、組織としては放置できない課題でもあります。
製造業でDXが進みにくい理由は明確です。DXとは本来「デジタル化を推進し、仕事を改善すること」を指します。製造業において「改善」は簡単にできることではありません。
なぜなら「変更=リスク」という前提があるからです。
製造業では工程や条件を少し変えただけでも、不具合や品質のばらつきが発生する可能性があります。特に半導体のような工程間の影響が大きい現場では、1つの変更が後工程に波及するため、慎重にならざるを得ません。
私の前の仕事でも、変更そのものが良くないもの(些細な変更も管理の対象である)とされ、改善も同様の扱いとしていました。
さらに中小企業では、
・日々の生産で手一杯
・新しい仕組みを試す余裕がない
・導入後の混乱が怖い
といった現実もあります。
つまりDXが進まないのは、ITに弱いからではなく、品質と現場を守るための合理的な判断なのです。私の経験でも、DXについての教育はあっても会社全体としてはあまり前向きな姿勢を感じず疑問に思っていましたが、品質と現場を守るための背景があったからかもしれません。
DXを推進するうえで重要なのは、考え方の整理です。
属人化は「なくすべきもの」ではなく、「依存度を下げるべきもの」です。
現場の経験や判断をすべて排除することは現実的ではありません。むしろ、現場の経験や判断は品質を支える重要な要素です。
そこで必要になるのが、判断の“根拠”を共有することです。
・なぜその判断をしたのか
・過去にどのように対応したのか
・どんな注意点があるのか
これらを「個人の中」ではなく「組織で扱える状態」にすることで、属人化への依存度を下げることができます。また、製造だけでなく品質管理にも同様に展開できるというメリットがあります。
ここからは、現場に無理なく導入できる具体策を見ていきましょう。
ポイントは、「人に聞く前提」から「情報を見に行く前提」へ変えることです。
まずは、情報がどこにあるかを明確にします。
・工程資料
・製造記録
・不具合対応履歴
・注意点・ノウハウ
これらがバラバラに存在していると、結局「人に聞く」状態から抜け出せません。
「まずここを見ればいい」という入口を作ることが重要です。
属人化しやすいのは、繰り返し発生する対応です。
・同じトラブルへの対処
・よくある問い合わせ
・判断に迷いやすいポイント
これらを整理するだけでも、現場の負担は大きく減ります。
単なる手順書ではなく、
・判断の根拠
・条件による違い
・注意すべきポイント
を残すことが重要です。
これにより、経験者でなくても一定の判断が可能になります。
情報が整理されることで、
・どんな判断が行われているか
・どこに負担が集中しているか
が見えるようになります。
これにより、改善の優先順位も明確になります。
こうした情報整理をさらに進める手段として有効なのが、AIの活用です。
AIは、人の代わりに判断するものではなく、必要な情報にすぐアクセスできる状態をつくるための仕組みとして使います。
例えば、
・資料を探す手間を減らす
・過去の対応をすぐに確認できる
・質問に対して関連情報を整理して提示する
といった使い方です。
現場では「誰に聞けばいいか分からない」という時間が意外と大きなロスになります。
その時間を減らすだけでも、生産性は確実に改善します。
ただし、ここで注意すべきポイントがあります。それはChatGPTなどの学習データがクラウド上に保存されるサービスに安易に資料を学習させないことです。会社の資料が外部に漏洩するリスクがあるため、ナレッジ共有専用のAIを活用することがいいでしょう。
こうした仕組みを実現する手段の一つとして、生成AIチャットボットがあります。
生成AIチャットボットのサービスを活用し、社内の資料を学習させれば「資料を探す・人に聞く」といった手間を減らし、「聞けばすぐ分かる環境」をつくることができます。
例えば、
・工程の注意点を確認する
・過去のトラブル対応を調べる
・社内ルールをすぐに確認する
といった場面で活用できます。
株式会社イズイズが提供する生成AIチャットボット「chabee®」は、既存の資料を活用しながら、社内のナレッジを“聞ける形”にすることができます。
工程や作業を変える必要はありません。また学習させたい資料もpdf形式やxlsx・xls形式、docx 形式、pptx形式など様々な形式に対応しています。
私の経験でも工程資料は様々な形式で保存されているケースが多かったため、そういった点を心配する必要がありません。
現場に新しい負担をかけることなく、情報共有を進めることができます。
「誰に聞くか」を「どこに聞くか」に変える仕組みです。
製造業のDXは、大きな変革から始める必要はありません。
私の前の職場でも、すべてを一度に変えるのではなく、影響の少ない範囲から段階的に改善を進めることが基本でした。
同じように、
・属人化をなくすのではなく、依存度を下げる
・情報を共有できる状態にする
・現場を変えすぎない
という考え方が重要になります。
AIやチャットボットも、その延長線上にある手段の一つです。
現場に無理をかけず、今ある情報を活かしながら、小さく改善を積み重ねていくこと。
それが、中小製造業における現実的なDXの進め方と言えるでしょう。
▲AIチャットボット「chabee」特設ページ(画像クリックでページに飛びます。)